カフェー建築の、その前のかけら
2019年9月6日こんにちは、八清の落海(オチウミ)です。
今回は建築系のへぇ~なお話。少々マニアックな内容ですが、最後までお付き合いください!
さて、トップ写真の中央に写っている2棟が今回のプロジェクトの舞台UNKNOWN KYOTOの建物なのですが、南棟(向かって左側)の外観は、喫茶店のような外観を持つ、いわゆるカフェー建築。外観だけでなく、実際に喫茶店を営業していた時代もありました。
それに比べ北棟(向かって右側)の外観は、1階こそタイルやガラスブロック、格子などの装飾が施されており華やかですが、2階はシンプルな白い壁に窓があるのみという、南棟に比べるとあっさり過ぎる感じです。
ファサード(外観)デザインを検討するに当たり、”極力いじらず既存を残す”という考えを大事にしたかったため、このままでいいものか、でも何か物足りない、、、と設計担当であるexpoの山田さんと2人で悩んでおりました。
そこでヒントを探しに近所を歩いてみると・・・あっという間にお手本がいくつも見つかるわけです。さすが五條楽園!こんな感じの手すりは通常の町家にはなく、遊郭建築らしくていいなぁ。これを北棟2階に再現したら面白いのでは?!しかしながら、 ”極力いじらず既存を残す”というところにこだわっていた我々は、根拠のない再現にはやはり抵抗を感じていました。 いかにも!っていう感じのものを新しく作るのはなんか違う。何かこう、ストーリーのような必然性が欲しい。かといってどうしたらいいのだ。ここでまた悩んでしまうわけです。
南棟の2階に上り、個室から表側のガラス戸を見ると、下の方は影になっています。これはカフェ―の三角屋根の影です。もしや!?と思い、固くなったガラス戸を無理やり開けるみると、何とそのまま残っているではないか、アレが。
そう!こんなのいいなぁ、と思っていた遊郭建築らしい手すりがなんとそのままそこに残っていたのです。いつの日かこの手すりは上から板金をかぶせられ、カフェー建築へと姿を変えました。それ以来、来る日も来る日も暗闇の中でじっと我慢しながら今か今かと出番を待っていた手すり。さぞかし寂しかったことでしょう。そんな”カフェ―建築の、その前のかけら”にいたく感動し、何とかこれを活かしたいと考えました。早速大工さんにうまく生け捕りできないかという無理なお願いしてみると、三角屋根を残しながらでは難しいとは思うけど、やるだけやってみる、との頼もしい一言。
どーーーーん。立派でしょう?素敵でしょう?大工さんの生け捕り大作戦により、封じ込められた当時のままの姿で救出され、にわかに明るみに出たもんだからなんだか少し恥ずかしそうです。(←嬉しすぎて妄想入ってます。笑)
この運命的な手すりとの出会いにより、ずっと悩んでいた北棟2階の外観のイメージに光が見えてきました。これを北棟2階の手すりとして生まれ変わらせよう、というアイデアが浮かんだのです。これで ”極力いじらず既存を残し”つつも、 ”物足りないあっさり過ぎる外観”に彩りを加えることができる!
それを立面図に描いてみたのがこの絵です。遊郭建築は間口いっぱいに端から端までガラス戸となっているのが通例ですが、北棟には両側に袖壁があります。ここが白い壁だとせっかくの手すりが両サイド(窓のない部分)で浮いてしまうため、もう1つのアイデアを絞り出しました。それは袖壁にタイルを貼るというもの。タイル壁を窓に見立てることで、手すりもきっと美しく映え、それでいてカフェー建築らしさも出る、とっても素敵なアイデアです。
少しマニアックな話でしたが、北棟2階外観の誕生秘話、ストーリー性があって面白いでしょう?ぜひこの手すり、見てみたくなったでしょう?全く異なる外観を持つ2つのカフェー建築。あなたはどちらが好みですか?